■Red Storm(GMT)
「Red Storm」は、現代航空作戦を扱った仮想戦のゲームです。
1987年5月にワルシャワ条約機構(ソ連+東欧諸国)が西ドイツに攻め込む設定です。
1ターンは1分、1ヘクスは約5km、地図はエッセン・フランクフルト・フルダ・ヴュルツブルクあたりです。
1ユニットは2機~4機をあらわしています。
NATO(北大西洋条約機構)ではアメリカ、イギリス、西ドイツ、ベルギー、ネーデルランド、カナダが登場します。ワルシャワ条約機構(以下WP)はソ連、東ドイツが登場します。
ベトナム戦争をあつかったDowntown、中東戦争をあつかったElusive Victoryと基本的には同じゲームシステムです。
ベトナム戦争をあつかったDowntown、中東戦争をあつかったElusive Victoryと基本的には同じゲームシステムです。
NATO地上ユニット初期配置 |
●RS3 First Strike
今回は、”練習”プレイとしてRS3 を選びました(以前のシナリオについては、こちらをご覧ください)。
シナリオ背景
開戦直後の戦闘機による制空戦闘の後、地上軍の侵攻前に司令部、砲兵、補給、予備などに航空攻撃をかけるシナリオです。目標はカッセル付近に布陣する西ドイツ第2師団。
登場戦力
・WP10個(護衛3、SEAD2、爆撃5)編隊(1編隊4機)+ジャミング任務のMi-8+SAM
・NATOはSAM網と迎撃機2個(プレイヤー選択により1〜3個)編隊
開始前作業
今回は練習のため、事前にNATOの地上ユニット配置、両軍の機種決定(ランダム)をしておきました。両軍の機種も事前に公開しておきました。WPのSAMは公開配置にしました。
WP担当プレイヤーには、ゲーム当日にISR(事前情報収集)判定、装備決定、飛行経路計画を行っていただきました。この作業だけで2時間ほどかかりました。
敵軍の地上配置ユニットのうち、SAMと対空砲の大部分は隠匿配置です。ISRによって隠匿配置が一部明らかになった後で機種・乗員練度・装備・飛行経路計画を行うのです。今回は練習プレイのため前2者はあらかじめダイスを振って決めておきましたが、”本番”のプレイにおいては、事前準備を可能な限り終わらせておくことが必要です。ダイスロールを行って判定する手順もあるので、事前手順に一考の余地ありです(ゲームプレイ当日に会ってからではゲーム時間が無くなってしまう)。
ところで、WPの構成としては、むしろよいほうでした。
護衛 :MiG-23の最新機種(視界外攻撃~以下BVR~可能)3個
SEAD(防空制圧) :MiG-27の最新機種2個
爆撃 :Su-17ですが、性能向上され、精密誘導弾搭載も可能です。5個
SEADは、ARM(対放射源〜レーダー波〜ミサイルと爆弾を搭載します。
爆撃のSu17は、搭載のバリエーションが多い(搭載能力と積載可能判定の両方)ことを活かし、通常爆弾でなく精密誘導ミサイル(テレビ誘導弾;EOGM)を多く搭載します。
展開
1〜2ターン
WP、NATOとも直進。発見されないために両軍ともDeck(超低空)高度。毎ターン、編隊ごとに探知判定を行いますが、Deck高度だと発見に不利な修正が加わります。特にNATOは発見されにくくなっています。
3〜6ターン 神の手に翻弄される
まず3ターンのランダムイベント(10面ダイス2個で19!…2%)でWPの爆撃隊1ユニットがトラブルのため帰還!
3ターン 青:NATO編隊、赤:WP編隊、黄:両軍戦線 黄おはじき:WP目標(本来は置かない)、緑おはじき:旋回点(本来は置かない) |
次いで4ターンのランダムイベントでは、NATOのQRAが緊急発進。2個編隊しかないNATOには重要な増援です。
そして運命の第6ターンのランダムイベント。天候急変(ダイス2個で4…3%)。Deck/Low高度に暑い雲が発生。。。まさに晴天の霹靂。これにより同高度域を通しては視程が1ヘクスに減少。視程が通る3ヘクス彼方から発射準備を開始する必要があるEOGM(TV誘導精密誘導弾)が使用できなくなってしまいます……
爆撃編隊20機のうち12機がEOGMを持ち、全機EOGMの3個編隊は対地攻撃力がほぼゼロに(機銃掃射はできるが)…
WPの爆撃編隊のログシート。"EOGM"が目立つ |
欧州の天気は変わりやすいとはいっても…
それにしても、今回ランダムイベントを振ったYさんのダイスは神がかりでした。
7〜8ターン F-15無双の2分間
1編隊離脱、NATO増援、天候急変と立て続けにおきる凶事に、失意に陥るWP陣営。そこを本ゲームのチート飛行機、F-15Cが襲います!
先行するWPの3編隊を護衛と見切って、その後ろの編隊をAIM-7MスパローでBVR攻撃。MiG-27からなるSEAD編隊。たちまち1機撃墜!同編隊は回避のため装備の大半を投棄。ほぼ無力化されます。
さらに、1ターンに2目標にBVR攻撃できるF-15のみの性能を活かし、さらにその奥の編隊(爆撃編隊)を攻撃します。1機に重損害を与え編隊を混乱させます。やはり装備を投棄、損害機を帰還させるべく退避を余儀なくされます(この編隊は、EOGMを持っていない~つまり、まだ有効な対地兵装を持っている~編隊でした。これで、有効な地上攻撃編隊はあと1個のみ…)。戦闘の度に使用武器の弾薬欠乏チェックを要求されるルールなのですが、F-15のAIM-7M(30%で欠乏)は未だ残っています。え~
7ターン ID202がF-15。 青:F-15の移動、黄:F-15のBVR攻撃(奥の目標は、なんと8へクス先!) 赤:損害が受けたWP編隊の退避ルート |
続くターンにも無双は続きます。またも連続BVR攻撃。1回目で1機撃墜。2回目ではずれ。ここでようやくAIM-7Mが打ち尽くされます。
また、6ターン以降NATOのもう一つの編隊である西独のF-4FをSAM(SA-11)が発見し不完全捕捉。毎ターン、対レーダー機動を行い逃れます。そして8ターン。SAMの捕捉を免れたところで、CAPのMiG-23MLDに空戦をしかけます!しかし効果なし。練度の差か(アメリカのF-15Cは練度~ルール上はAggression Value~+2、西独のF-4Fは-1でした)。
そして、ついにWPのSEAD編隊であるMiG-27がARMでRoland SAMを攻撃。命中前にシャットダウンされたため被害は軽微でしたがレーダーを停止させます。爆撃目標への道をあけました!でも、有効な爆撃隊はどこに?
8ターン 黄:SEADのMiG-27がARM攻撃、SAMレーダーシャットダウン 青:F-15はさらにAIM-7でBVR攻撃2回 赤:F-4FがMiG-23に空戦を挑むが、交戦できず ★F-4FにもF-15にも近くにMiGが迫る。次のターンに先に動くのはどちらか? (NATOが先攻をとる確率の方が高い) |
9ターン 反撃
耐え忍んでいたWPの辛抱がようやく身を結ぶときがきました。
計算通りイニシアチブはNATOが取ります。もちろん先攻を選択。しかし、ひいたチットは「0」!事実上WPが先攻に。ついにWPの反撃!
まず、F-4FにMiG-23MLDが有視界戦闘で攻撃。奇襲!となり、2機を撃墜!
次いで、にっくきF-15CにMiG-23MLDが空戦を挑む。しかし、さすがはF-15。返り討ちでMiGの1機が撃墜されます。F-15C強い。
それでも、WPはさらにMiG-23MLDで交戦。先の先頭で態勢が整っていなかった(有視界戦闘を行った編隊は、回復するまで機動性が落ちます。それを狙われました)F-15は、ついに1機が撃墜され、また1機も損害を受けます(※)。NATOのCAP編隊は2機編制のため、これで無力化されます。有効なCAP編隊がイベントで登場した1個のみになりました。しかし、WPのCAP編隊3個も、すべて混乱(Disordered)しており、戦力としては機能できません。
※これはルール適用間違いがありました。標準空対空戦闘(記事では有視界戦闘と表記)が行われたら、参加したら双方のユニットは「非探知に戻る」のです。探知は移動の前に実施されます。空対空戦闘はもちろん探知していないと実施できません。したがって、1ターンに2度の標準空対空戦闘を受けることはありません。ご指摘ありがとうございました。
ここで時間切れのためお開き。
この時点で有効な戦力は以下の通りです。
NATO:増援で登場したQRA1個(正体は西独F-4F)
WP :SEAD1個(ARM使用済のため爆弾のみ)、爆撃隊1個(他爆撃隊は機銃のみ)
なお、件のF-15Cですが、3機撃墜し1機を重損害。投棄や混乱などで、WPの5個編隊を無力化させました。Ace(Aggression Value:+2)の駆るF-15Cは悪夢です。
勝敗は関係ない練習ではありましたが、ルールも一通り確認することができただけでなく、しかもアクシデントによる笑いあり、ドラマチックな展開あり、と極めて充実した会でした。MVPはランダムイベントが冴え、F-4Fを2機撃墜したYさんですね。
NATO:増援で登場したQRA1個(正体は西独F-4F)
WP :SEAD1個(ARM使用済のため爆弾のみ)、爆撃隊1個(他爆撃隊は機銃のみ)
なお、件のF-15Cですが、3機撃墜し1機を重損害。投棄や混乱などで、WPの5個編隊を無力化させました。Ace(Aggression Value:+2)の駆るF-15Cは悪夢です。
勝敗は関係ない練習ではありましたが、ルールも一通り確認することができただけでなく、しかもアクシデントによる笑いあり、ドラマチックな展開あり、と極めて充実した会でした。MVPはランダムイベントが冴え、F-4Fを2機撃墜したYさんですね。
●感想
BVR戦闘が最大限に威力を発揮しました。前作に比べて遥かに射程が増しています。さらにF-15の特別ルールである、BVR engage(ロックオン)自動成功・1ターンに2回のBVR戦闘可能な能力は、BVRの威力をさらに増しています。また、シナリオルールによりF-15のパイロットは練度が高く設定されることが多いことも、さらに脅威(驚異?)となるのです。
NATO戦闘機のウィークポイントは、やはり編隊あたりの機数でしょうか。編隊あたり2機編制なので打たれ強いとはいえません。編隊あたりの機数、編隊の絶対数で勝るWPは、今回のプレイでも見られたように返り討ちにあうことを織り込んで波状攻撃をかけ、モラルチェックを強要することが最善手なのかもしれません。数量的にWPの主力であるMiG-23もBVR兵器を搭載していますので、反復攻撃戦術も一層取りやすい筈です(BVR戦闘ならソビエトドクトリン~有視界戦闘の際には攻撃機数を実数の半数で算定~も適用されません)。
一方、本シナリオにおけるNATO側は、今回のプレイのように航空ユニットを早く接敵させる必要もなく、味方SAMとCAP編隊を合わせた防空体制を形作るのが本来の姿でしょう。また、NATOには長距離SAM、中距離SAM、短距離SAM、赤外線誘導SAM(今作から登場)が揃っており、これらを組合わせる防空体制を作るのも挑戦し甲斐のあるテーマといえます。
それはさておき、F-15が登場したときのWPの落胆ぶりを思うと、(ゲームバランスでなくプレイヤーモラル的に)何かしらの調整を施したくもなる気もします。
空対空戦闘では質の面でNATOに水をあけられるWPですが、対地攻撃は計画しやすいと感じました。「爆撃」raidの編成表に限っていますが、NATOはARM装備率が高くありません。46%(アメリカのF-4G、F-16CとイギリスのBuccaneerだけです。WPは64%)に過ぎません。つまり、NATOはARMを使わずに対SAM戦術、対レーダー対空砲に向かわねばならない局面が多いわけです。
1機撃墜あたりの相手に与える勝利ポイントはNATOの方が高く(機種による違い無し)、この点でもARM搭載率の低いNATOのリスクは高くなっているといえます。
ところで、シナリオRS3のいちばんの感想は”狭い!”です。南北14へクスしかありません。SAM(HAWKやSA-11)の攻撃距離は9~10へクスもあるのに。ちょっとごちゃごちゃしがちなシナリオです。侵攻経路が限られるので練習にはよいのですが。