2020/06/14

100周年…White Eagle Eastward(S&T)

ポーランド・ソヴィエト戦争100周年です。


Twitterで話題になり、比較せねば…と思い立ちました。
Red Star White Eagle(左)とWhite Eagle Eastward(右)
Red Star/White Eagle(RSWE)はGDW版。White Eagle Eastward(WEE)は昨年ソロプレイしていますが、まさか再びプレイするとは…
 
このテーマは、ヴィッスワ河の奇跡、ピウスツキ、トハチェフスキー、ブジョンヌイと有名どころが目白押しです。史実の展開が(シーソーゲームというよりも)混沌なので、それをどれだけシステムで"自然に"表現できているかがポイントでしょうか。
 
RSWEは、コマンド140号にレビューが記載されています。オーソドックスなシステムでプレイしやすいでしょう。ZOCに進入しても、追加移動力を費やせば移動を停止する必要がありません。敵軍に追加で費やさせる移動力は、delay factorと呼ばれ、ユニットごとに異なります。戦闘後前進も移動力で与えられ、同様にZOCを通ることもできるので戦線突破が頻繁に起き流動的な展開になりそうです(今回はプレイしていません)。
WEEは、後でMOVE誌で改訂の試みがされた通り、突拍子もないシステムのためかBGG評価も5点台です。昨年プレイしたときは奇天烈だと思ったのですが、混沌を表現しようとしているのかもしれません。
 

■White Eagle Eastward(S&T)

まさかこのゲームを2回目プレイすることがあるとは…
1ターンは5日、全36ターン。
セットアップ
 

●シークエンス

0)天候フェイズ(オプション)
 6分の1の確率で泥濘となり、消費移動力が2倍に。例えば、好天時は平地は1、森林は2、渡河は+1であるのが、2/4/+2になるのです。
1)イニシアチブ決定・増援
 イニシアチブは6面ダイス1個-1(0~5)。ピウスツキがいるスタックのみは+1します。増援スケジュールに従い、増援を利用可能増援ボックスに配置しますが、盤上に投入するためには政治ポイントの消費が必要です(1ユニットあたり1点消費する)。補充ユニットを毎ターン1ユニット得ます。
2)移動フェイズ
 移動力は歩兵/山岳歩兵3、騎兵5、戦車/機械化4、司令部6。ZOC無し、鉄道移動あり。
3)戦闘フェイズ
 メイアタック。戦闘比CRT、ダイス1個。戦闘時に両軍の「ショック値」を比較し、攻撃側が大きければ+2のダイス目修正。防御側が大きかったら-1修正。「ショック値」はKonarmia騎兵が最大の5です。「ショック値」を使うためには「Charge」宣言が必要(装甲列車、指揮官はChargeせずとも使える)。戦闘結果は消耗中心。「Charge」したユニットは消耗しやすい。戦闘結果「防御側Rout」は、攻撃側のイニシアチブの数値と同数のへクス後退する謎?のルールです。戦闘後前進はありません。
4)Exploitationフェイズ(第2移動フェイズ)
 補給ユニット以外のすべてのユニットを、イニシアチブ値と同じ移動力で移動させることができます。ややもすると、移動フェイズよりも移動範囲が大きくなります。ピウスツキのスタックは移動力が1多いものとして移動できます。
5)補給フェイズ
 ステップロスしたユニットが補給ユニットとスタックしているとき、補給ユニットを取り除き、完全戦力面に戻します。
赤軍プレーヤーが(1)~(5)をプレイした後、以下フェイズを行ってターン終了。
6)政治フェイズ
 政治ポイントを消費して終了ターンを早める試みを行います。
7)ランダムイベントフェイズ
 両軍それぞれダイス2個を振り、指示に従います。

●1-3ターン

ポーランド軍優勢の局面でゲーム開始。
ポーランド軍の基本戦略は、マップ上のすべての都市を先におさえてしまう(ヴィデブスク、スモレンスク、ゴメル、キエフが開始時にソ連支配下。他は全てポーランド軍支配)ことでしょう。勝利条件は支配都市数であり、中立除き19都市がマップ上にあります。赤軍は5~7ターンに最大の増援が到着します。ただ、本ゲームで増援を登場させるには「政治ポイント」の消費が必要(1ユニット=1ポイント)です。政治ポイントは初期値10で、以降の獲得は「攻撃される側」が多く入手できるようになっています。したがって、ポーランド軍は赤軍増援が登場する前に全都市を占領し、赤軍増援が来たら都市に守備隊を残しひたすら後退。その過程で政治ポイントを赤軍よりも多く蓄積し、支配都市が過半数である間にゲームを終わらせる(政治ポイントは、ゲームの最終ターンを早めることにも使える)ことが良いと思います。
2ターンにキエフが陥落、3ターンにゴメルも陥落。スモレンスクは3ターンにイベント「White Mutiny」が発生し、スモレンスク守備隊が白軍に寝返りました。
3ターン終了
 

●4-6ターン

マップが狭い…この作品では、ポーランドは6ターンくらいまで攻勢が続くのだから、もっと東に広いマップにしてほしかった。ポーランド軍、ソ連軍とも機動の余地が無いのがとても残念。せめて盤外突破や盤端到達の政治ポイントボーナスなどが欲しいです。
南西方面軍は風前の灯となっています。イベント「Ataman Petlura」(ウクライナのナショナリスト)により、ポーランド第7騎兵師団が17ターン(85日)早期到着しました。
6ターン終了

●7ターン

盤端の攻防の最終局面。ポーランド軍に包囲され南西方面軍が壊滅します。トハチェフスキーも除去。
トハチェフスキー除去
ソ連軍ターン、ついにブジョンヌイのKonarmia騎兵が登場します!。ソ連軍は5ターンからの3ターン分の蓄積増援、計14個師団を投入…あれ、そんなに多くないぞ…やはり、ここまでのポーランド軍の攻勢でセットアップされたユニットは殆ど壊滅しており、たかだか14個師団では勢力図は動きません。
そして、14個師団をマップに投入したことにより政治ポイントは両軍29ポイントで拮抗しました。
政治フェイズで、ポーランド軍は政治ポイントを29点すべて使い、ゲームエンドを29ターン短縮する宣言を行う(ゲームエンドが現在の第7ターンになります)。マップ上の都市はすべてポーランド支配であり、放置すればソ連敗北。また、はりあって29点投入すればゲームは続くが政治ポイントはゼロになります。政治ポイントは都市を占領する/されると両軍に同量入ります。攻撃すると防御側にのみ入ります。つまり、防御側に多く入る仕組みになっているのです。唯一ワルシャワ占領だけが、攻撃側が多く入る可能性があります。…ここはソ連軍投了かもしれませんが、続けてみました。政治ポイントは両軍とも29点使い、ゲームエンドは36ターンのままです。ゲームは継続します。
7ターン終了

●8-9ターン

ブジョンヌイの騎兵は一路西進しワルシャワを目指します。西部方面軍も歩兵主体ではありますが、ポーランド軍のいないところを選び西進します。ポーランド軍は占領した都市に守備隊を残しつつ後ろから追う展開です。両軍とも歩兵中心なので、ブジョンヌイ騎兵が有利です。そして、記載のユニット移動力を無視して(1d6-1)移動力で移動する第2移動フェイズ(Exploitationフェイズ)のダイスの目次第ともいえます。こうなってくると、白ロシアとウクライナの平原を疾駆する機動戦っぽいのですが、ユニット数も政治ポイントもポーランド軍の方が多く余裕があります。またもイベント「Ataman Petlura」でポーランドに増援登場。
9ターン終了

●10-13ターン

赤軍がワルシャワにとりつきます。しかし、鉄道移動を併用しピウスツキも追いつき、ブジョンヌイ騎兵を包囲攻撃。1ユニットを除去。西部方面軍がワルシャワに隣接しますが1:3にしかなりません。政治ポイントもポーランド19、ソ連15。ワルシャワを陥落させる可能性が少なくなり、もはや逆転は難しく、終了としました。
13ターン終了

●感想

7ターン以後のソ連軍の疾走は、このゲームシステムの特徴である「イニシアティブ値(1d6-1)が、兵科に関わらず第2移動力となる」不確定さが良い意味であらわれているといえます。ポーランド軍も支配都市に守備隊を置きつつ後退すると、ちょうどワルシャワ付近で遭遇することになります。ピウスツキも前線から追いつき、ピウスツキ対ブジョンヌイ(今回はトハチェフスキーが除去されてしまったが)が生じ盛上がります。
しかし、どうも緊迫感がイマイチです。序盤の展開が一方的になり、7ターン以降のソ連軍の体制では、ポーランド軍にヒリヒリ感が無い。今回のプレイのように、序盤は後退せずセットアップ時のソ連軍を可能な限り除去し、マップ全ての都市を占領することがこのゲームおけるポーランド勝利の基本ではないでしょうか。ソ連軍の大量増援があってもユニット数的にも政治ポイント的にも余裕があります。


ポーランド-ソヴィエト戦争は、先が見通せない混沌とシーソーゲームが、どのように表現されているのかを体験するのも醍醐味のひとつであるような気がします。本作品の特徴であるイニシアチブも、この意味では否定されるものではないと思います(好きです)。ただ、それがゲーム展開に役立ってはいないところが極めて残念。以前のプレイでもそうだったのですが、結局政治ポイントの利用が勘所になってしまっています。
「イニシアティブの値を1d6-1で決め、それが敵軍を戦闘で後退させるときのヘクス数と、自分の第2移動フェイズ移動力になる」なんて、とっても特徴的なシステムなので、何か惜しい。

(また、このゲームではポーランド-ソ連両国および周辺諸国の動向もランダムイベントで表現されており、それだけでも興味深いです。この規模のゲームでイベントの採用には賛否あるでしょうが)。

MOVES誌の改訂ルールを使い、一度はプレイしてみる必要があると思っています(その価値があるかはなんとも言えません)。この消化不良が消えてスッキリするでしょうか。
 

●オマケ

ポーランドが主役のゲームを並べてみました。