2024/03/24

教育してやれ…カフカス攻防戦(BANZAIマガジン)

いやこのゲーム面白いと思いますよ。
原題は「Panzers along the Terek: Operation Ordzhonikidze – November 1942」。
BANZAIマガジンの19号です。まだ在庫あるようですね。
元のゲームのBGGレーティングに影響しているのか…ペリー・ムーアだからでしょうか。
でも、BANZAIマガジン19号の巻頭記事を読むと、だいぶ(かなり?)日本で手を入れたようです(BGGのコメントでは、元ゲームは酷評されているようです…)。

もしくは、マイナーなテーマであることで人気が無いのでしょうか。。。
コーカサス戦線がマイナーなのですかね。本誌記事にもあるように、他のゲームと照らし合わせて状況を連想できれば、そんなに知名度が低いわけでも無いと思いますが。本誌p17の地図にゲーム舞台となるオルジョニキーゼも記載されていますが、地図上に「ココ!」と強調してもよかったと思います。
なお、このゲームについての詳細解説と地図は本誌p15~p19に詳述されているので、ご安心ください。

(BONSAIゲームズさんのサイトの以下の記事でも、凡その場所が記されています。「コーカサスキャンペーン(GMT/CMJ)」のマップ上で説明されているので、イメージも持ちやすいのではないでしょうか)
 
ゲーム終了時

■カフカス攻防戦(BANZAIマガジン)

ハーフマップ(A2)1枚。1へクス=1km、1ターン=1日、ユニットは中隊~大隊(ドイツ)、大隊~連隊/旅団(ソ連)を表します。

そういえば、WW2東部戦線の作戦級を対戦するのはいつ以来でしょうか…あまりプレイしないので10年以上ぶりかもしれません。

●展開とルール

ダイスで担当陣営を決めました。ドイツを担当。両者初めてのプレイです。選択ルールは使いませんでした。
 
第1ターン
ソ連軍は(ほぼ)固定配置。ドイツ軍はマップ外から進入します。第1ターンは第13装甲師団。戦車中隊と自動車化歩兵からなる機動グループが2スタックあります。
 
移動フェイズでは、1スタックごとに移動しますが、敵に隣接(ZOCに入る)と移動終了。自動車化部隊はその場で機動攻撃が行えます(オーバーランは無い。戦闘すると移動は終了)。つまり、機動攻撃は1スタックvs1スタックになります。
 
戦闘は、まず防御側の射撃と損害適用、次に攻撃側の射撃と損害適用です。射撃結果で退却すると混乱し、次の移動フェイズ終了まで移動と戦闘はできません。ただ、ドイツ軍(とテレク河以東のソ連軍)は、1ステップ損害を受けることで退却結果を無視できます。射撃はファイアパワー、攻撃/防御側の兵種により火力が修正され、地形による防御効果、補給状態、混乱状態、砲爆撃支援でカラムシフトします。さらに、攻撃防御双方に戦車が含まれているなら、”戦車優越値”の差分だけカラムシフトします(大きい側のみ)。ドイツ軍は0~5、ソ連軍は0~4です。戦車ユニットは装備車両等によって微妙にレーティングが異なります。ドイツ軍はⅣ号長砲身型の「5」(でも、3~0もあるので作戦当時の損耗度合いも現わしているのでしょう)、Ⅲ号突撃砲の「4」。ソ連軍はKV-I、T-34が「4」ですが数は少ないです。
 
さて、ドイツ軍の第1ターンの移動に話を戻します。北の補給源から登場したグループは、アルドンの2ヘクスを占領します。ゲーム中にカウントするVPは2種類。1つが「突入点」です。これは、ドイツ軍が町ヘクスに入った際に得られます。ヘクスあたり1点です。ソ連軍に奪回されても失われません(ゲーム終了時には、道路で連絡線が通じている町ヘクスごとに2点得られます。もちろん、終了時に保持していなければなりません)。
ここで、もう1グループを南北どちらの補給源から登場させるか悩みます。北から登場させれば、フィアグ・ドン川にかかる橋まで確保できそうです。
ただ、そうすると南の補給源に居座られてしまうので、結局南から入ることにしました。目の前のアラギルにいる装甲車と装甲列車に勝利し、アラギルへ隣接するヘクスを占領。
黄色:VP町(いちばん右がオルジョニキーゼ)
黒:ドイツ軍の2~3ターン増援
青:ドイツ軍の進路。
青矢印の右2ヘクスの川が、「フィアグ・ドン川」
 
第2ターン
13装甲師団の第2陣、23装甲師団の先鋒が登場。また、ZOCを無視して移動できる、ブランデンブルク歩兵大隊も登場します。
ドイツ軍は燃料に苦しんでいるので、両装甲師団で移動力を分け合う手順が入ります。12移動力を配分するのです。
前ターンに、13装甲師団を南北分けて進入したこともあり、焦点が絞りづらく6移動力ずつの均等配分となることが多いでしょう。第2ターンは8/4、以降は6/6となりました。23装甲師団の2個グループはそれぞれ南北から登場。北からのグループはアルドンスカヤの橋をおさえにかかります。南からのグループは13装甲師団のグループと共同してアラギルの1ヘクスを占領します。また、13装甲師団の先鋒がラススヴェート付近の浅瀬を確保しようとします。
黒:ソ連軍の3ターン以降増援

第3ターン
23装甲師団の残り、独立山岳歩兵などがドイツ軍の増援です。加えて、ルーマニア軍が登場します。ルーマニア軍はドイツ軍と異なり、退却結果をステップロスで耐えることができないので、重要な戦線を任せられません。そこで、北方の残敵への対処に使います。アラギルを2ヘクス占領。フィアグ・ドン川を3個グループが渡河。ソ連軍は増援(ソ連軍の増援は3ターンに初めて登場します)の大半をアルドンスカヤ方面に集め、反撃に転じます。結果的に、ここでの渡河は、戦線拡大が難しくなってしまいました。
赤:ソ連軍進路
 
第4ターン
ドイツ軍に前半最後の増援が登場。この後は、11ターンまでありません。このターンの増援の大部分は独立部隊。スタックでは不利(ドイツ軍は6個中隊、同一師団なら9個中隊)ですが、移動力は固定で「9」もあるのがありがたいです。
一方のソ連軍は、3ターン以降に増援が登場。このターンも大量の増援が登場します。
南方では、ギゼリに突入。町突入VPに加え、ソ連軍の南北連絡線切断のVP(ターン毎)も得ることができます。一方、北方ではアルドンスカヤ付近(フィアグ・ドン川対岸)から撤退。持久できる兵力を残して南方に送ります。北端、アラギル近郊の残敵は歩兵に任せ、13・23装甲師団も集結を始めました。
ソ連軍は4ターンの増援に加え、圧力が弱くなったアルドンスカヤ方面から南に進め、ギゼリ以西の連絡線に圧力をかけます。まだドイツ軍のユニットはほとんどおらず、ここからがドイツ軍の正念場でしょうか。
青:ドイツ軍進路
赤:ソ連軍進路

第5ターン
ドイツ軍は北端、アラギル付近から残敵を一掃。ギゼリ~フィアグドン川付近までの戦線を作ります。このゲームでは小河川に防御効果が無い(丘、村、町にはあります)ので、平地での戦線構築になることが多いです。ソ連軍は移動後の攻撃(機動攻撃)を基本的には行わないことにします。機動攻撃は1スタックごとに攻撃します。攻撃の種類に関わらず、防御射撃を先に受けます。ソ連軍は退却結果をステップロスで耐えることができないので、1スタックごとの攻撃では各個撃破されてしまう可能性が高いです。そのため、移動では複数スタックを接敵させ、次のターンの「周密攻撃(移動前攻撃)」をかける戦術をとります。さらに、砲兵支援もソ連軍は周密攻撃にしか使えないのです。
従って、ドイツ軍は複数に接敵されたスタックへの圧力を自軍ターンに減らすことができるよう予備を置いておく必要があります。ここでは、1514の1スタックがそうです(1213も予備スタックに見えますが、実は戦車中隊は最上部の1つだけで、下は自動車化歩兵です。「戦場の霧」ルールのためスタックの下のユニットを見ることができないので、ブラフを試みることもできます)。
黄色:文中言及の1514

それにしても、オルジョニキーゼは遠いです。6ヘクスあるので得点源ですが、そこまでいくには衝力が足りません。先頭との連絡線を維持するだけで手一杯です。突入して得られるVPよりも、その後包囲除去されて献上するVPの方が多いでしょう。
ソ連の増援登場箇所も近くなってきますので。
 
第6ターン~
戦線が作られ、ドイツ軍と接する位置のスタックが増えてきたソ連軍は、満を持して砲撃を本格的に開始します。
 
両軍とも、師団/軍団(ドイツ軍)、軍団/軍(ソ連軍)単位に砲弾点が与えられています。
ソ連軍は軍砲兵(配下のどの部隊でも使用可能)が12点あるのが圧巻です。ドイツ軍の軍団砲兵は5点しか無いのに…(ソ連の軍団、ドイツの師団にも1~3点あります)
 
使い方は以下の通りです。
 
 ・砲爆撃フェイズ(移動前)に、1ヘクスあたり1〜3点を費やして射撃(防御射撃無し)
  ※目標ヘクスに自軍ユニットが隣接しているか、3ヘクス以内の丘にいること
 ・機動攻撃時に、1点を使って射撃1カラムシフト (ドイツ軍のみ)
 ・周密攻撃時に、1点を使って射撃1カラムシフト

ターン終了時に、ダイス1個を振って出た目による補充が得られます。ソ連軍は出た目そのまま、ドイツ軍は半分(端数切捨)です。

このターン以降、以下のような展開が多くなりました。
 ソ連軍砲兵砲撃→移動(機動攻撃無く接敵のみ)→ドイツ軍移動(機動攻撃)で圧力強い箇所の1スタックを攻撃し退却混乱に追い込む

この過程で、じわじわとユニットが除去されるようになってきました。ターンが進むにつれて、除去されるユニットが増えます。砲撃だけにとどまらず、ドイツ軍ターンの機動攻撃時に防御射撃を受けての退却を無視するために支払う1ステップが、積み上がってきています。
6ターン
青:ドイツ 23装甲師団最後の機動グループを配置転換
赤:ソ連軍増援は東端からも登場
 
7ターン
混乱マーカーを取り除く前の写真。
毎ターン、ソ連軍は3~4個スタックがドイツ軍の機動攻撃を受け、
混乱を被ります。混乱ユニットは移動不可、ZOC喪失します。
ソ連軍は自軍移動フェイズで別スタックによって戦線を埋めています
 
第8ターン~
ギゼリ南方からもソ連の増援が登場。歩兵とはいえ攻撃正面が増えます。また、ギゼリがZOCで囲まれているので新たなユニットを入れにくくなります。
ギゼリ防衛は、工兵2個大隊と3号突撃砲(戦車優越値4)。こちらから打って出ないので、ソ連に有利なカラムシフトを与えないために「4」は必要です。
 
※後知恵ですが、ドイツには「5」の対戦車大隊があります(88mm?)。3ターンの増援で。これをギゼリ、連絡線防御戦線などの焦点にいち早く送り込めればよかったです。とはいえ、13、23装甲師団所属のため、移動力に制限があります。3号突撃砲は独立部隊のため移動力は固定で「9」。最前線へ送り込むのにこの移動力の差は大きいです。それでも、この時点では戦線ができているため、さほど多くの移動力は必要としませんから、うまく移動力を「9」にできたかもしれません。
8ターン
赤:ソ連軍南端からの増援

9ターン
ギゼリ南のソ連歩兵を撃退するものの、
前線のソ連軍が厚くなってきた


10ターン
ソ連軍の砲撃が最高潮のターン。
補充しても砲弾薬が6点にしか戻らないほどの猛砲撃。
ギゼリ周辺、戦線のソ連軍が分厚い…

第11ターン~
ドイツ軍はなけなしの軍団砲弾点を2点使い、ギゼリ北の歩兵スタックを攻撃。混乱、退却に追い込みます。これにより、アルホンスカヤまでの道路上に誰もいなくなりました。ZOCを無視して移動できるブランデンブルグ大隊をアルホンスカヤに突入させます(VP1点)。もちろん、敵中に突入させるので最終ターンまで維持できるわけではありませんから、突入点1に対して、除去されると(4ステップユニットなので)2点。差し引き-1点です。それでも突入させたのは、ひとえに前線への圧力を減らすために他なりません。
この段階では、前線のスタックは弱くなっていることが明らかになっており、背後に置いた装甲予備も、スタックの半分が自動車化歩兵だったり全部ステップロスだったりと、張子の虎状態でした。
このゲームでは非補給でも移動、戦闘できるので他の町にも危険がおよぶことを考えると放置できないだろう…と考えてのことです。
ソ連軍は前線と予備から2〜3部隊を充て、1ターンでブランデンブルク大隊を無力化しました。差し引きマイナスでも、ここで得られた時間は極めて大きかったです。
青:ブランデンブルグ大隊の進路
赤:ソ連軍の反撃
黄:アルホンスカヤ






また、ドイツ軍に最後の増援である、5SSヴィーキング師団が到着しました。11ターン、12ターンにそれぞれ機動グループが1つずつ到着します。
12ターン
ギゼリを守備していた突撃砲と工兵大隊が消耗し、
ついに23装甲をギゼリの守備につかせなければならなくなった
青:5SSヴィーキング師団
黄色:ギゼリへの連絡線

第13ターン(最終)

5SSヴィーキング師団をどこに差し向けるか、ソ連軍はどこで連絡線を切るかが、最終ターンのポイントです。
13ターン開始時
青:ドイツ軍ターン攻勢
赤:攻撃目標
オレンジ:ソ連軍ターンに機動攻撃したスタック


ドイツ軍ターン。ここに至って、ドイツ軍はようやくギゼリとの道路連絡線(敵ZOCも友軍がいれば通せる)を確保しました。終了まで維持すれば2点になるので、保持したいところです。まずは5SSの前ターンに到着した機動グループをフィアグドン川東に展開。ソ連軍を連絡線から遠ざけるように押し込みます。
そして、23装甲の機動グループも前進し、連絡線が確保されたのです。
上の写真の地域の一部、
ドイツ軍ターン終了時
赤:ソ連軍退却
青:ドイツ軍前進

最終ソ連軍の反撃は、この連絡線に対して行われました。5SSが投入され厚くなったフィアグドン川付近ではなく、ギゼリとギゼリ西です。ギゼリそのものへの攻撃は、ステップロスで耐えました。
そして、ギゼリ西では、23装甲の機動グループに対して、まずは砲撃。これでついにスタックは1ユニットのみに。ステップロスした戦車中隊1ユニットのみです。これに対してソ連軍は戦車スタックによる波状攻撃(機動攻撃)を敢行します…
しかし、投入するスタックが防御射撃で次々撃退され、3回撃退されたところで攻撃できる部隊が無くなりました。
オレンジ矢印:13ターン開始時写真での丸印スタックの機動突撃
青:ドイツ軍Ⅳ号戦車中隊の防御射撃
オレンジ丸:防御射撃により混乱、退却

ソ連軍担当談「教育された」「ここにはバウアーがいたに違いない」
 
VP計算
ドイツ軍:突入点7+連絡線遮断10(4〜13ターン)+与損害19+町6へクス×2=48
ソ連軍:与損害16+町8へクス×2=32
数字よりも競っていた印象です。連絡線遮断の維持が綱渡りだったのと、ドイツ軍のスタックの多くがそろそろ消滅しそうだったので…(最終ターンに”黒騎士中隊”以外は除去されたスタックのように、他のスタックも多くがボロボロでした)

●感想

両軍それぞれに攻勢イニシアティブがあり、面白い展開です。
今回は、序盤は戦線突破とそれを防ぐ機動戦、5ターン以降はギゼリと連絡線を巡る攻防になりました。お互いに相手の残戦力と弱いところを推し量りながら仕掛け合う展開でした。
わずかなルールの違い(1ステップロスによる退却無視と、砲弾点の使用制約)によって両軍の性質の違いを際立たせ、シークエンスも非対称”風”になって運用の違いも楽しめます。ソ連軍は物量を活かして砲撃と周密攻撃をねらい、ドイツ軍は集結したソ連軍の一角を機動攻撃で撃退して防ぐ…

ハーフマップで、しかもこの日は「項羽と劉邦(GJ)」も プレイしています。比較的コンパクトなゲームですが、それを超える面白さがあります。

●天候決定と航空支援

プレイの展開の項には書いていませんが、ターン最初の手順は天候決定です。
両軍それぞれダイスを振り、同じ目であれば悪天候となります。今回のプレイでは起きませんでした。
悪天候の影響で一番大きいのは小川が大河になることでしょうか。大河を越えてはZOCが広がらず、退却できません。悪天候のリスクを考えると、5ターン以降の戦線の位置は危険だったように思います。

また、天候決定のダイスでは航空支援も決まります。
 ・ドイツ>ソ連の2倍→スツーカ1
 ・ドイツ>ソ連→無し
 ・ドイツ=ソ連→悪天候
 ・ドイツ<ソ連→シュトゥルモビク1
 ・ドイツの2倍<ソ連→シュトゥルモビク2
ソ連軍有利なのは、この地域ではソ連が航空優勢を持っていたことを表現しています。
 
航空支援は、砲撃と同様に射撃支援にも使えますが、単独で爆撃に使うことが多いでしょう。爆撃力(使用砲弾点に相当)は2〜3ですが、戦車優越値5〜6を持つので、戦車のいるスタックを攻撃するのに使われます。

ところが、今回のプレイでは
 シュトゥルモビク2つは、1回だけ
 両軍飛ばないのも2~3回
 スツーカが飛んだのも3回はあった(第1ターンを含む)かと…
ドイツ軍にとって、極めて幸運な空模様でした。
 

●おまけ1

 「黒騎士物語」と外伝を読み返しましたが「教育してやれ」は2コマしかありませんでした。意外。それも怒鳴りつけるシチュエーションではなく、第3者を”教育”せよとの指示を、語り手であるクルツに対してする時だけなのです。

あ、そもそもこの時期にバウアーはA軍集団/コーカサスにいませんね…('42秋の乗車は38t、冬は「冬の嵐」作戦に参加しているはずですね)
 

●おまけ2

写真は、「Nach Stalingrad!(VV54)」のコーカサスシナリオ(「エーデルワイス」)の初期配置です。
オルジョニキーゼは遠い、そしてバクーは遠い遠い…このマップで見ると、”「カフカス攻防戦」の北端~南端の連絡線を切断するとドイツ軍に1点”の意味合いがわかりますね。