2023/01/21

一斉チャージを見てみたい(怖いけど)…The Charge of 3 Kings(NAC)

■The Charge of 3 Kings ,Navas de Talosa 1212

The Charge of 3 Kings,Navas de Talosa 1212(NAC)を遊ばせていただきました。
レコンキスタ中の最大の戦い、ナバス・デ・トロサの戦い(wikipedia)を描いた戦術級ゲームです。最近、レコンキスタのゲーム多いですね。


楽しい!です。ルール分量も多くないのですが、ユニットによる分岐・例外処理が多く、もう少し整理して書いてほしかった…と思います。
セットアップ
ただ、立派なコンポーネント・特殊能力オンパレードのユニット(大司教、王様、やる気の無い王様、十字軍、テンプル騎士団など宗教騎士団、国王直属騎士団、旗手、宗教聖戦士、いきなり逃亡する部隊、パルティアン・ショットができる騎馬弓兵、アフリカ槍兵、槍兵、ラクダ兵…)・陣営ごとの戦略カードと戦術カード…と、デザイナーの愛を感じるゲームです。
また、6面・8面・12面ダイスを使うので、ウォーゲーマーは驚愕するかもしれません(士気チェックは6面、接近戦勝敗判定は8面、飛び道具は12面なので、混乱することは無いと思います)。このブログタイトルである20面は使いませんが。

…と、ディティールに圧倒されますが、でも、肝は活性化です。
5つのフォーメーション(前中後左右)のうち、3つを任意の順で選んで活性化します。次のターンは、このターン活性化してない2つ+ランダムで選んだ1つが活性化するのです。

さらに、そのターンに活性化したフォーメーションをもう1度活性化する(リーダーの指揮下にあるなど一定の条件があります)試みもできます。

使用することで、活性化を割り込んだり、活性化フォーメーションのランダム選択をやめたり、相手のカードをキャンセルすることができる、「コマンドポイント」もルール化され、活性化の駆け引きの追加要素となっています。ゲーム中に1回だけ使える特別コマンドと、毎ターン使えるが使用にダイス判定が必要な標準コマンドがあり、特別コマンドの使用タイミングは展開を左右するでしょう。

原則2ターン連続では活性化できないフォーメーションの活性化をコントロールし、時にコマンドやカード(活性化に影響を与えるカードは多いです)を使って、決するタイミングを狙うのがゲームの根幹なのだと思います。
タイミングはそれで計っても、実現するにはディティールあふれる個々のユニットの働きになるのですが…

●ユニットと戦闘解決の例

部隊ユニットのレーティングは「戦闘力-士気-移動力」。指揮官はこれに指揮範囲が加わります。
士気チェックは頻繁に行います。いわゆる潰走/壊滅判定はもちろん、戦術変更判定にも使います。統率レベルもあらわしているのでしょう。
また、戦闘は「勝敗判定→敗者の士気チェック」の順番で行われます。
勝敗判定は、参加ユニットごとに「8面ダイス+戦闘力+修正値」の大小比較です。1ユニットを複数ユニットで攻撃できますが、値を合計せず、それぞれで比較します。したがって、数を頼みに押し寄せても、勝敗判定ダイスを多くふることができるだけです。
強いユニットは、そうそう敗者になりません。

例えば、キリスト教のテンプル騎士団(5-5-6)が、ムスリム軍の3-3-4歩兵2個に白兵戦をしかけられたとします。
勝敗判定は、キリスト教側は「8面ダイス+5」、ムスリム軍は「8面ダイス+3」を2回。ムスリム軍のどちらかの値がテンプル騎士団の値より大きければムスリム軍の勝利です。ただ、言い換えれば、騎士団が「6」以上の目を出したらムスリム側に勝利はありません(同値は引き分け)。

今度はディテールを見るために、騎兵突撃の処理を見てみます。
キリスト教のテンプル騎士団(5-5-6)が3へクス先のムスリム騎馬弓兵(3-3-8)に騎兵突撃をかけたとします。以下のような手順になります。
 
  (1)移動
 (2)騎馬弓兵の隣接へクスに入る
 (3)騎馬弓兵の「早がけ」(弓による防御射撃と離脱~士気チェック成功すれば)。
 (4)士気チェックに成功して離脱されたら、騎兵突撃目標変更のための士気チェック。ただし宗教騎士団は自動成功。 
 (5)騎士団は移動力残っていれば移動継続。
 (6)先に軽騎兵(4-3-8)がいたとする。隣接、突撃を宣言。
 (7)騎士団の騎兵突撃に対し、軽騎兵は士気チェックに成功すれば、撤退し突撃をかわせる。撤退成功したとする。
 (8)(4)(5)を繰り返す。
 (9)先に歩兵(3-3-4)がいたとする。その隣接へクスに入って騎兵突撃
 (10)ここから近接戦闘の処理。
騎士団は8面ダイス+5(戦闘力)+3(突撃ボーナス)、歩兵は8面+3(戦闘力)です。
 (11)騎士団が勝利したとします。敗者は士気チェック。6面を振って士気3以下なら成功。それでも1ヘクス退却。4なら潰走、5以上で壊滅します(騎兵突撃を受けての判定は、1ペナルティ受けます)。歩兵は潰走したとします。空いたへクスに騎士団は戦闘後前進しなければなりません。
ここまでで騎兵突撃の1回目が終了します。個々の騎兵は、1度の騎兵突撃で2回突撃戦闘ができるのです。「普通」の騎兵は、(4)で士気チェックをしなければなりません。失敗したら突撃戦闘を浪費するのです。騎士団など一部の重騎兵は、(4)で自動成功するので浪費がありません。
 (12)(11)で進んだへクス(または移動力が残っていれば継続)に隣接した先に、槍兵(3-5-4)がいたとする。2回目の突撃を実施。騎士団は8面ダイス+5+2(突撃ボーナス;2回目は+2)-1(槍兵に対する突撃修正)。槍兵は8面ダイス+3。
…とまぁ、重騎兵は(移動力内にいれば)敵ユニット複数を蹴散らすことができるのです。この例では4ユニットですね。

●展開

ながながと騎兵突撃を書いてきた理由は、
今回のプレイにあります。
キリスト教軍第1ターン最初の突撃

タイトル通りの”3王の突撃”ではありませんでしたが、
アラゴン王(左翼)、ナバラ王(右翼)、カスティーリャのディエゴ・ロペス2世・デ・アロ(前衛)の3つのフォーメーションから同時突撃を受けました。
アラゴン王は通常通りの活性化、ナバラ王はカード効果(活性化フォーメーションでなくても6騎兵を活性化)、デ・アロもその前のカード効果(指定したリーダーとその指揮範囲2ユニットは、自分のフォーメーションの活性化にかかわらず、活性化できる~ヒーロー効果です)で全面突撃に近い形になりました。
一斉チャージ前
(向かって左がナバラ王、右がアラゴン王)

一斉チャージ後

アラゴン王の部隊には、卓越した弓兵もあらわれ(カード)、一斉突撃でムスリム右翼の戦線は崩壊します。
ナバラ王の部隊も、戦果こそあがらない(ムスリム軍が士気チェックにことごとく成功、潰走・壊滅しない)もののムスリム軍左翼を押しまくります。

ムスリム軍はここで起死回生の極悪カード「聖戦士の熱狂」(意訳)を投入。活性化フォーメーションに加えて、すべての聖戦士が活性化、戦闘に+3・敵の士気チェック(6面ダイス判定)に2ペナルティという非道カードです。これはさすがにキリスト教軍が特別コマンドを投入しキャンセルしました(このときは、コマンドによるキャンセルはキャンセルできないと思っていました。できるようです)。


また、ムスリム軍は自軍が数的優勢を持つ騎馬弓兵による攻撃をねらいますが、カード「逆光」でキャンセル。
アラゴン王の勢いは止まらず、ムスリム軍右翼は壊滅しました。
ムスリム軍右翼崩壊寸前

ここでお開き。
どちらも勝利条件は達成していませんでしたが、ムスリム軍の損害がキリスト教軍の3倍あり、キリスト教軍優勢でした。

●感想

冒頭にも書きましたが、デザイナーの愛を感じます。
展開も派手。特に騎兵突撃が華やか、かつ強力です。今回のプレイで感じたのは、ムスリム軍が勝つのは厳しいかもしれません。
戦闘力が高いユニットに接近戦で勝つのは難しいので、騎馬弓兵を最大限に活かして後退しながら射撃を繰り返すことになるのでしょうか。騎士団に対しての射撃成功率は12分の1〜2にしかなりませんが…
士気でキリスト教騎士団に互角なのは後衛の槍兵しかいないので、必然的に戦線を下げる(下げざるを得ない)ことになるでしょう。両翼の騎兵団も騎馬弓兵を除き下げるのでしょうか。結果的にムスリム軍は自陣営に引き込んで戦うことになるのかもしれません。その有効性を検証してみたいものです。
そのときには、ぜひ活性化のコントロールの醍醐味が感じられるまでターンを進めたいですね。
 

●ルールの疑問点・不明瞭な点

楽しいゲームなのですが、少し曖昧な点があります。プレイ前に両プレイヤーで確認しておけばよいと思います。特に、(1)(2)(7)は重要でしょう(他にもありそうです)。

(1)騎兵突撃の”最初の1ヘクス”の記述
1.2項Foward Hexと10.1項2段落目の表現が間際らしい。おそらく10.1項は、「騎兵突撃を行うユニットの最初の一歩」を表現しており、1.2項は「騎兵突撃の手順の最初の1ヘクス」のことを表現していると思われる。
(2) ZOCの無効化
9.Movement冒頭のコンセプト2番目「・」では、隣接6ヘクスのうち2ヘクスに敵がいると他4ヘクスのZOCを失う、と記されている。一方、英文12ページ「Zone of Controls」の項、「ZOCs can be cancelled:」で始まる段落には隣接ヘクスのうち2ヘクスに敵がいるとZOCを失う、と記されている。
(3)11.2 コマンドポイント
Regularコマンドポイント使用判定に参照するマーカーを動かす方向が、キリスト教軍側しか記載されていない(ムスリム軍は左右逆になる)。
(4)Harrying
2番目の「・」の例外の「+2」を得られるユニットはいったい何か?ムスリムの騎馬弓兵は「4-3-8」と「3-3-8」。どちらも「軽騎兵」なのだが…
(5)ムスリムの2-2-4ユニットの絵柄の中に、1ユニットだけ4-2-2がある。無論2-2-4と思われる。
(6)ユニットの向きの規定があるのだが、向きを変える規定が存在しないように見える。
(7)Panicked Retreatの際に、盤端を超えたら?規定が無い。