2020/12/13

変わっても変わらなくても終わらない、そしてウィスキー・ズールーとチトーと教皇とサン・シール

2020/12/13 - 22:45 Posted by 20-on-20 , , ,

 

本記事はHarpoonArrowさん企画の「War-Gamers Advent Calendar 2020」に参加させていただいています。
今年はエントリーしてから書き上げるまでまる2日弱。ほぼ推敲無し。
読みにくい点、多々ありますがご容赦ください。

 
2020年の春は、新型コロナ感染症の影響でゲーム会に訪れることも無く、手持ちのゲームものやネット情報に触れるのがゲームとの接点でした。

そんな折に刊行されたコマンドマガジン152号(2020/4/20発行)には驚きました。古いゲームの紹介が多かったのです。TITO(SPI)、サムライ(AH)、キングメーカー(AH)…

特に、TITO(SPI)の記事があったのには本当に驚きました。
こんなマイナーなテーマのゲームが、発売から数十年も経って紹介記事が執筆されるとは…
私はこのホビーを友人の勧めで始めたのですが、TITOもサムライもその友人が所有しておりプレイさせてもらいました。”地味なマップ”と揶揄されることも多いTITOですが、当時はその印象を持った記憶がありません。
    
TITO(SPI)、右はPartizan!(DG)
マップ:TITO(SPI)は左

むしろ、パルチザンと枢軸軍の、潜伏地帯での追いかけっこの繰り返しがよくイメージできた印象があります。数は多いが頼りにならないイタリア軍・時折出てきてすぐ帰る頼れるドイツ軍・動向が読めないチュトニクが描き織りなす歴史に魅かれた記憶がありました。複雑なユーゴ情勢に関心を持つきっかけにもなりました。当時も今も、私はこのゲームに好意的なイメージを持っています。残念ながら、当時は同じ感想を持った人はそう多くは無かったようです。
TITO関連記事。TACTICS誌と当時作っていた同人誌。


TITOの紹介記事は、創刊間もない隔月刊時代のTACTICS誌にもあったはず…と探したところ、3号(SFゲーム特集号)にありました。
隔月刊TACTICS2号・3号

また、今年の4月に国際通信社からアステロイド(GDW/HJ/K2P)が再販されました。国内流通は4回目…ですか、古いゲームですが大したものです。
TACTICS3号には、GDW社のSFゲームが多数紹介されていました。当時のゲーム仲間は「アステロイド」の魅力に取り憑かれ、何度も熱心にプレイしたものです(もちろん「インペリウム」も)。このゲームの魅力の大半は、ルールブックにあると思っています。地球の管制センター、フォボス基地、宇宙船ウィスキー・ズールーのやりとりを読んではワクワクしたものです。B級SFの世界をゲームで構築したいデザイナーの愛をルール各項に感じ、読むだけで楽しめたものです(個人的には、サーシャ関連のルールが好みです)。
ゲームの本質を壊すことなくディティールをも描き味付けをするバランスは素晴らしい(当時はそこまで明確に言語化できなかったが)。
 
再販された「戦争と平和」と「アステロイド」

あらためて初期のTACTICS誌を読んでみると、他にも強く印象に残った記事がありました。
ひとつは「マキャベリ」の紹介記事の中でのハウスルールの紹介です。版元以外が公式でないルールに紙面を費やして紹介するなど、今となってはなかなか考えられません。ただ、この「教皇の破門」ハウスルールは当時の私を惹きつけ、ゲーム本体を購入しました。さらにウォーゲーマー以外のクラスメートまで巻き込んで毎週のようにプレイすることにもなりました。近代以前の歴史を題材にしたゲームを好むのは、このころに始まったのかもしれません。

TACTICS誌連載といえば、「大陸軍光と影」。
諸国民戦争を扱った回の一節「サン・シールは24時間以内に粉砕されます」のインパクトが大きく「戦争と平和(AH)」の購入者が複数出ました。勢い余ってキャンペーンまでやったものです。「戦争と平和」も再販されましたね(旧版の方が良いとの意見が多数…)。

三つ子の魂100まで、とはよく言ったもので、SF/近代以前/マイナー戦線に飛びついてしまうのは治りません。

----------ーーーーーーーーーー

ところで、2020年の元旦は西武/そごうの広告「さ、ひっくり返そう」が話題になりました。炎鳳関の映像と共に流れるフレーズは、まさに「ひっくり返そう」。
このCMは、われわれへの内面への応援というか、心意気というか、メッセージのようなニュアンスだったと思うのですが、元旦時点では誰も予想できなかった、生活習慣も含め大きくひっくりかえる1年になりました。

テレワークが当たり前になり、オフィス面積を半減したり通勤手当を廃止する会社も出るなど、今までの社会が如何に「人が物理的に移動する前提」で作られているかを痛感させられました。
説明会、プレゼンテーション、セミナー、営業など、対面であることが当然と思われていた活動が、もはやオンラインは通常の選択肢となっています。まだまだリアルに人が携わらなければならない活動の方が多いのでしょうが、オンラインでもできてしまう活動を見直すきっかけになった時期ともいえます。

とはいえ、オンラインは対面の単なる代替手段では無く、そもそも別モノである、ということは(世界各国で論文が発表されています)周知の事実です。
現在のオンラインツールは、いわゆる"非言語情報"が伝わりにくい媒体ですから、
グラウンドルール」を設けるのが一般的ですよね。例えば……

・発言は最初に名乗る、最後は「以上です」

・司会者を置いた方が円滑(→TRPGのオンラインセッションは、必然的に満たしてますね!)

・指示代名詞を使わず、コンパクトに論理的に言語情報だけで表現する

・思考や想いも言語化してしっかり伝える

・身振り手振り、うなずきやリアクションも大袈裟気味に

・常に笑顔を意識的に!

・カメラ/マイクがOFFになっていることはよくあること。大らかに対応

・相手のプライベート空間には配慮しよう。ハラスメント厳禁

・それでも、コミュニケーションの基本は誠意と相手の尊重であることは変わらない


ゲーム会の場で見られるといわれている、他者の話に被せてでも情報量を(悪気なく)ひたすら多く発信するスタイルのプレイは、オンライン時代に対応すると改めなければならないかもしれません。さらに、アナログゲームは必然的に対面が中心なので、自治体の要請、会場の都合や感染対策によってもプレイ環境の難易度があがります。
交渉が大きな要素を占めるゲームも、プレイ難易度が上がるでしょうか。
(「ディプロマシー」のプレイをZoomを使い、参加者が自由にブレイクアウトルームを移動できる設定にすれば秘密交渉はできるでしょうが…交渉時間制限を厳守するために進行役は必要な気がします。なお、「交渉している雰囲気が周りから見えない」ことがプレイに影響するかは不明です)

多くのウォーゲームは、交渉よりもファクトと論理が重視されているデザインになっているため(語弊あり)に、オンラインにより適していると思われます。既にVassalがプラットフォームとして存在していますから、これを補完するツールを試していくのも面白いと思っています。仕事ではZoom/Teams/WebEx/Slack/GSuite等を案件特性や顧客事情に合わせ組合せたり選択していますが、ホビーの世界でも同様に探求できるテーマなのでしょう。


--------------------

2020年の大晦日を以って活動休止する、ある人気グループの最新アルバムの最終曲のタイトルは"The Music Never Ends"というそうです。
Never Ends、よい表現ですね。
環境は変化してもそれを起点に新たな挑戦ができることをポジティブに受け止め、また来年につなげたいですね。さて、来年は何やりましょうか。

諸事まだまだ落ち着かない世の中ではありますが、皆様くれぐれも健康に配慮し、良いお年をお迎えください!



追記:本日12/13に、予定されていたゲーム会に顔を出しました。すぐに失礼しましたが、(会場が近かったので) 大昔住んでいた家と通っていた中学(小学校は廃校になっていました…)の横を歩いて帰りました。アステロイドやマキャベリやサムライやチトーや戦争と平和を初めてプレイした時期に過ごした場所です。
Advent Calendarに12/13エントリーしたことも含め、偶然のなせる技は粋だな、とつくづく思います。