ユニットはSPI(切断済だから)、マップはタクテクス(机にちょうどよい大きさだったから)、ルールはRPGamer版(整理されているから)でプレイ。
■Barbarian Kings (SPI/HJ/K2P)
わずか100個のコマ、B4サイズ(オリジナル版ではもっと小さい)のマップ、当日インストでもプレイできるルール、でこんなに世界観あふれるゲームが作られていることに感嘆します。さすがグレッグ・コスティキャン!
プレイヤーは、キュスタフォン大陸で覇を競う王になります。手勢はエルフ、ドワーフ、オーク、人間。人間はさらに文明国、野蛮国、封建国。鯨族、蛙人、飛行船、海賊なんてのもあります。彼らを招集するには、(費用を払うことに加えて)居住しているエリアを支配していなければなりません。必然的に、プレイヤー個々の軍勢に特徴がみられるようになります。森林を拠点とした王の軍勢はエルフ中心になる、というようにです。
また、プレイヤーを特徴づけるもうひとつが、キャラクターの能力です。能力には軍事3種類(戦術、行軍、退却)と魔法4種類(精神、精霊、幻覚、ネクロマンシー)があり、王は3つを秘密に選択しておきます。同じ能力を複数選んでも構いません。選択した能力は変更できません(なお、雇用できるユニットには英雄と魔法使いがあり、前者は軍事から1つ、後者は魔法から1つを選択します)。ここでもプレイヤーの特徴・個性がでます。かつて、毎ターン嵐や洪水を起こし続ける精霊魔術3つの王や、艦隊を率いて1ターンで惑星を半周する行軍3つの王を見たこともあります。
■展開
この日のゲームは、2人で行いました。外交要素の全く無いガチンコ対決です。それぞれ3領地持ってのスタートです。
私(赤いマーカー)はやや不安はありましたが、エルフ1、文明人2。相手プレイヤー(紫マーカー)はドワーフ1、蛮族1、オーク1です。序盤の税収では優っているものの、文明人部隊の維持費が高いのが難点です。なお、王の能力は戦術×2と精霊魔術。
●第1ターン
エルフ歩兵2、騎兵1(序盤から騎兵はコスト高ではありますが、ゲーム中最速のエルフ騎兵で未支配エリアを一気に占領するつもりでした)、守備用の文明人歩兵(英文ルールでは「レギオン」なんです)2、そして英雄(戦術能力)と魔術師(精神魔術)を購入。この魔術師が大活躍。精神魔術を使って、中立のドワーフを味方につけました。しかも、判定時ダイスで「1」を出し能力向上(魔法の成功率は6面ダイスで2以下。判定時「1」を出すと以降の成功率が1上昇。「6」だと1低下します)。
しかし、相手の精神魔術師もさるもので、こちらの英雄を精神制御。未支配エリア一気占領プランが白紙に。騎兵のみで中立勢力に突撃させられますが、退却ですみました。危なかった。危なかったといえば、こちらの王と英雄がいるエリアに物質魔術の「洪水」。発動に失敗してくれて助かりました。成功していたら王も英雄も移動できないところでした。指揮官を同じエリアに固めるのは危険です。
第一ターンは魔法によりドワーフを味方につけたことによる領地拡大がなかったら次ターンの部隊増強にも支障が出るところでした。
●第2ターン
両軍とも精霊魔術「竜巻」が成功、相手の1領土の税収を無くします。両者とも税収「10」の領地から収入が得られません…ただ、当方の精神魔術師はまたも活躍。相手(紫マーカー)の黒い英雄を精神制御。ほとんど有効に移動させません。またも「1」で出て成功率が「4」に上昇!また、エルフ騎兵をようやく稼働させ一気に南下させて領土を拡大します。
紫マーカーはもう1人の英雄を移動させ領土を拡大。また、王が中央のオーク族部隊と合流します。
●第3ターン
またも当方の精神魔術師がマップ左上の紫マーカー英雄を精神制御。領土外に出られません。
そして、プロットの綾が…紫マーカーの王と赤マーカーの王がメーラで遭遇。両軍ともここでの遭遇を予想しておらず、不意の戦闘となりました。
しかし、森林でのエルフ族のアドバンテージ(戦闘力2倍!)が功を奏し、紫マーカー軍は全滅。王は捕虜となりました。
次のターンまでプレイしましたが、実質的には3ターンで勝負はついたと思います。
■感想
これだけ小規模なゲームでありながら、ファンタジー世界の領土拡張戦争ゲームとしては総合的にみて今でもトップクラスだと思います。ゲーム規模に対する「Sense of Wonder」を感じる/浸れる度合が最高クラスに高いと思っています。
マップはA4(SPI版)、B4(HJ版)でユニットは100個。ルールも比較的シンプル。それでいて種族(エルフ、ドワーフ、オーク、人間…)やユニット(歩兵、騎兵、艦隊…)の多様性があります。もちろん、種族によってユニットのレーティングも変わります。
多様性といえば、このゲームの魅力は個人ユニット。王、英雄、魔術師には秘密裏に能力を選びます。前述のとおり、これも自分の国の”キャラを立たせる”ことに繋がります。
個人ユニットの能力と、初期領土の種族との組み合わせで、そこに物語で生まれてきそうで想像をかきたてられます。エルフの魔術王とか、野蛮国の征服(作戦)王、人里離れたネクロマンサーからの呪い…
とはいえ、40年以上前に作られたゲームなので、練り込みや工夫が足らない点も多々あります。
ひとつは、そして最大の問題は、細かい点でルール記述が煮詰まっていないことです。RPGamer版では、編集の方々がそうとうな労力をかけてルールの明確化を図ったことが伺えます。もしプレイされるのであれば、RPGamer版を強く推奨します(それでもまだ曖昧なところがありますが)。
2点目は、記録が多いことです。毎ターンの収入や部隊の維持費用もありますが、移動も事前に移動計画を立てるのです。ここだけで悲鳴をあげて敬遠されそうですが、このゲームでは精神魔術の読心(移動計画を見てから自分の計画を立てられる)や、幻覚魔術の不可視(マップから取り除き、他のプレイヤーから見られず妨害されずに移動する)があるので、有効な相互作用となっているといってもいいでしょう。
RPGamer版では、記入シートも用意されました。これは移動計画に費やす時間や記入ミスをかなり低減できるすぐれものです。旧版をプレイした者からすれば、これは感涙ものです。導入は必須でしょう。
3点目は、勝利条件。エリアの税収合計が勝利条件となっていますが、この値が高く勝負がつくに至らないこことが多いです。条件を下げるか、時間制にしてしまうなどで対応できそうではありますが。
些細なこととしては、もう少しディティールが欲しかった点が2つ。1つは戦闘があっさりしすぎていること。戦力比による1回ダイスロール判定なので、小戦力側にはほぼ逆転のチャンスがありません。もう1つは英雄能力の「退却能力」の効果がイマイチで、選ばれたのを見たことがありません。
とはいえ、全てこのゲームの本質の魅力を減らすものではありません。繰り返しになりますが、このゲーム規模で、これだけの”異世界感”に浸れるゲームはそうそう無いと思います。
ちなみに、新版で残念な点がひとつ。
プレイにはまったく影響しませんが、王の名前やゲームスケールに関する記述が落ちたことですかね。これらも世界観を醸し出すのに必要だと思うのですが。