2025/01/12

鷹なのか鷲なのか…Hawk Howl / Eagles over Britain(KVD)

 バトルオブブリテンを描いたミニボックスゲーム。BGGでは「Eagles over Britain」。箱にはBattle of Britain1940、日本語ルールにはHawk Howlとなっています。私見ですが、BGGでのタイトルが広まっていないことは、このゲームの認知が広がらない一因だと思います。


 ■Eagles over Britain ( Hawk Howl )

ゲームは4ターン、各ターン10ラウンドからなります。ゲーム時期は明記されていませんが、3、4ターンのドイツの勝利条件が空軍基地破壊数になっているので、バトルオブブリテン前半のトピックス、おそらく鷲攻撃あたりではないでしょうか。
ユニット規模は不明ですが、イギリスは10ユニット(+ダミー)、ドイツは戦闘機6ユニット(Bf109×5、Bf110×1)、爆撃機14ユニット(Ju87はユニット化されていない)です。
各ラウンド、シークエンスに従い両軍は「出撃」させることができます。また、空中にいる航空機を1エリア移動させます。移動させなくても構いませんが、飛行時間は経過します。特徴的なのが、マップ上に飛行時間を示す箇所があり、移動と飛行時間を合わせて記録できるすぐれものです。

第2ターン第3ラウンド、ドイツ移動直後(悪天候なのでドイツは裏面のまま)。
この後、イギリスの移動。ビギンヒル、ケンリーにドイツ機が。
(上が南、手前が北です)


イギリス出撃/整備→ドイツ移動→ドイツ出撃/整備→イギリス移動→同じ空域にいたら戦闘、の順でラウンドが10回行われた後に、勝利判定とイギリス側の設備修理と飛行基地の変更を実施しターンが終了します。ターン開始時には天候を決定し、まずドイツの出撃があってから、10回のラウンドに移ります。
ドイツの航続時間は3〜4(Ju88、Me110などが4)ラウンド、再出撃までの整備時間は2〜3ラウンドです。一方、イギリスは航続時間は一律2ラウンド、整備時間は1〜6(損害が無ければ1、損害を受けていれば機種により3〜6!ラウンドを要します)。ドイツは飛行場に帰還するにも海越えになることと、補充機が多いことから整備時間を決めているのだと思います。イギリスは飛行場が近いこと、一方でパイロットや機体の補充に終始苦しめられていたことが、数値が大きくなりうる要因とみなされているのかもしれません(デファイアント3…なぜ?、ハリケーン4〜5、スピットファイア6)。
イギリスの飛行隊配置・整備状況(ドイツからは隠す)
最上部(チャートの外)が出撃可能・チャート最上部が整備状況。
スピットファイアが右端の「6」に置かれている。
その下の工場マーカーは生産ポイント残

  

天候は非常に重要なファクターです。6面ダイスで1〜2で好天、3〜6で悪天候です。3ターン連続して同じ天候にはならないルールです。好天ではイギリス有利、悪天候ではドイツ有利となるデザインがされています。好天では、英本土上空のドイツ軍は隠匿状態が解除(機種がわかる)され、また空戦の第1ラウンドに任意の目標を選べるのです。一方、悪天候では英本土に入っても隠匿が解除されず、また空戦ではイギリスの目標決定アドバンテージが無くなります。さらに、(隠匿したまま移動できるので)実際の航続時間を超えて移動させることもできます(航続時間超過のユニットは空戦も爆撃もできないので、実際はブラフにしかなりませんが。ただ、イギリス側の移動を困惑させる効果はあります)。
 

空戦は基本的に1ユニット同士のペアを組んで実施します。空戦力の値のダイスを振り、「6」の目が出たら相手は損害を受け帰還します。損害を受けると、前述の整備時間ラウンド使用できません。
護衛がいない(3ラウンド)・好天時の1ラウンド目は英軍が任意のユニットを攻撃できます。つまり、爆撃機をターゲットにできます。悪天候時の1〜2ラウンドおよび好天時の2ラウンド目は、「戦闘機ユニットの多い側が、自分の1ユニットと相手となる敵の1ユニットを指定する(ただし、戦闘機優先)」としてペアを決定します。つまり、悪天候時に護衛が随伴しているドイツ爆撃機をイギリスが攻撃するには、護衛よりも多いユニット数で攻撃する必要があります。

戦闘機同士の3ペア(黒線で表記)での空戦。
この場合、イギリスは爆撃機を攻撃できない
(好天であれば、1ラウンドだけは直接爆撃機を攻撃できる)
 
ドイツに護衛戦闘機がいない時は、
戦闘機-爆撃機のペアで3ラウンド実施する

ところが、このユニット数を見極めるのが難しい。好天時はいざ知らず、悪天候時は戦闘機が同じエリアに入らないとドイツ軍の正体はわからないのです。戦闘機は一度空戦すると帰還しなければならないため、イギリスは1ユニットだけで護衛機を帰還させるのも戦術としてはあります。ただ、損害を受けると整備時間が長くなる(前述のように、スピットだと6ラウンド使用できない…)のが考えものです。また、後述しますが、爆撃解決時にイギリス戦闘機がエリア内に存在すると成功率が下がるので空戦後もエリアに戦闘機を残すためには多くのユニットを送り込みたいところです。イギリスは10ユニットしかないのですが。

イギリスは海峡に迎撃機を送る。
空戦を行った戦闘機は帰還しなければならないので、
上陸前に護衛機を”剥がす”こともできる

ロンドン大空中戦1。ドイツの写真上右列は飛行時間3、左列は4。
イギリスはロンドン空襲を読んで動員可能機を集結させた
(そのため、直後に再度ロンドンを攻撃されたときは
2ユニットしか出せなかった)

ロンドン大空中戦2。このターン悪天候だったので、
ドイツは航続時間3のユニットもブラフで
スタックさせていた。表面にした際にそれらは帰還するので、
実際に参加したのは上記ユニット

爆撃は、そのエリアにいる爆撃力合計のダイスを振り、5〜6(イギリス戦闘機が不在)または6(イギリス戦闘機がいる)の目で1ヒットを与えます。原則として2ヒットで地上施設(飛行場または工場)に損害を与えます。もちろん、爆撃を解決したら帰還します。

ロンドン大空中戦3。2ユニットだけになったが爆撃を行う。
爆撃力合計と同数のダイス6個を振り、
「6」(イギリス戦闘機がいなければ「5~6」)が出たら1ヒット。
工場に対しては2ヒットが必要。ここでは工場に被害は無かった


次のターンの再度のロンドン爆撃。
爆撃力合計33個のダイスで「6」を2回出せば
工場に損害(そのマーカーが置かれている)


ここでミソとなるのが爆撃の制限です。同じエリアにいる全爆撃機が同時に爆撃するかしないか選択(一部の爆撃は不可)・同じエリアの爆撃機はそのエリアの同じ目標を爆撃しなければならない、1回の爆撃では損害は1段階しか与えられない、の3点です。飛行場は損害と破壊の2段階があります(工場は1段階)が、つまり飛行場を破壊するには、最低2回の攻撃が必要になるのです。1つのエリアに施設が複数ある場合も同様です。例えば、ホーンチャーチエリアには工場2、飛行場1があります。この3目標をすべて破壊するには、最低でも4回(飛行場は2段階あるので)の攻撃成功が必要になるのです。

2ターン終了直前のマップ。飛行機はすべて帰還している。
黄色マーカーは飛行場損害、黒いマーカーは工場の破壊。
黄と黒の両方のマーカーが置かれているのがホーンチャーチ。
ここには工場2、飛行場1がある。
ターン終了時に、黄色マーカー2つは修理された


10ラウンドが終わると、勝利判定と修理/基地変更となります。イギリスは破壊されていない工場から生産ポイントを受け取り、施設(原則飛行場)を修理できます。また、生産ポイントは戦闘機の整備時間を短縮できます。勝利条件が主として飛行場の損害数である以上、ドイツ軍は飛行場に爆撃を集中したくなりますが、修理させないためにも工場の爆撃も考慮しなければなりません。


ミニゲームでありながら長くルールを書いてしまいました。個別のルールは簡単でありながら、それらの綾でうまくバトル・オブ・ブリテンの特徴を描いていると思います。ドイツは短時間で効率よく、またイギリスを幻惑する部隊編成が勘所でしょうか。イギリスは整備が追いつかず足りなくなるユニットで如何に妨害するかの悩みを楽しめます。ダミーがイギリスにあって「?」だったり、天候によるプラスの影響を受ける陣営に違和感を感じたりしますが、それもルール表現の手段ととらえることもできます。
あまりプレイ報告を聞きませんが、好ゲームです。


今回のプレイでは、ドイツは途中3飛行場を破壊/損害にまでしましたが、最終的にすべて修理されてしまいました。ロンドンとホーンチャーチの工場への損害が最終戦果で、イギリスの勝利となりました。
とはいえ、前述の通りイギリスは(も?)苦しいです。だって、数値の上では空戦力も、整備時間も、航続時間も、おしなべてドイツに劣るのですから。何かしら目に見える明るい材料が欲しくなります。まぁ、そういったところを含めてギリギリで頑張るのがバトル・オブ・ブリテンということなのでしょうけれど。