No, Spain…No,Spain....スペインさえ来なければ…
オランダはまず勝てません。でも、とても面白いです(今回私はオランダ担当)。
オランダ同盟軍は指揮官も少ない、指揮能力に秀でているわけでもない、盤上戦力も少ない、動員力も少ない、領土も狭い(後背地が無い)、とフランスに対し秀でているところがなく終始押されている展開になります。
■No Peace without Honor!(Compass)
17世紀、仏蘭戦争/英蘭戦争をカバーします。
むちゃくちゃマイナーなテーマですが、私はこのテーマを熱望していたのですぐに購入しました。
が、テーマがテーマなのと、もはや日本ではNPwSシステムは飽きられた?からかプレイに至りませんでした。ようやく念願かなって対戦にこぎつけました。
●No Peace without Spain!(NPwS)システムのゲーム
なお、NPwSシステムのゲームを歴史順に並べるとこうなります。
(1)No Peace without Honor!(本作):仏蘭戦争/英蘭戦争(1672~1678年)
なお、ネーデルラント継承戦争 1667~1668年の結果を、フランスの選択でセットアップに反映します。
名誉革命が1688年~1689年に起きます。もちろん、(1)のオレンジ公ウィリアムが英国王になります。
(3)No Peace without Spain!:スペイン継承戦争(1701~1714年)
1715年にルイ14世は亡くなります。
プレイヤーが操るのはフランスとハプスブルク。プロイセンは中立!で開始し、イベントによって参戦します。フリードリヒ大王は強い!ですが、欧州全体から見ればプロイセンも辺境です…
時代が近いので、(1)〜(3)は複数登場するリーダーもいます。コンデ公、リュクサンブール公、テュレンヌ、マールバラ公、プリンツ・オイゲン、そしてオレンジ公ウィリアム/ウィリアム3世。
さらに、(1)〜(3)は連続キャンペーンシナリオも用意されています。(1)に含まれるネーデルランド継承戦争から、スペイン継承戦争までの、いわゆる”太陽王の戦争”キャンペーンです。
●本作の特徴
上記(1)~(4)のゲームシステムは類似していますが、本作の特徴は「戦争疲労」です。
オランダ同盟軍、フランス軍、両軍合計それぞれ3つの値を管理します。初期値はゼロです。基本的には、本国スペースの大規模(2以上)要塞を失うごとに1加算されます(第1ターンのみ、オランダは1以上の要塞を失っても上昇)。
この値によってイベントが発生するのです。ミュンスター和約(フランス「6」 )、オレンジ公ウィリアムとメアリー・スチュアートの結婚(オランダ「7」 )、ハプスブルクの参戦(オランダ「5」 )などです。合計が22に達すると、ナイメーヘンの和約が成立し、ゲームは終了するのです。
ゲームが終了した時に、VPが7以下であればフランスの勝利、8以上であればオランダの勝利です。また、毎ターン終了時の冬営フェイズにサドンデスの判定があります。こちらは0以下でフランスの勝利、15以上でオランダの勝利です。
●展開
セットアップの手順で、フランスプレイヤーは(遺産帰属戦争/ネーデルラント継承戦争の結果として)「フランシュ・コンテの放棄」を選択します。これにより、ブザンソンはハプスブルク支配でスタートします。また、フランスプレイヤーはルイ14世をマップ上に配置しませんでした。VPは11で開始します。
第1ターン(1672年)
イベント「イギリス艦隊出撃」により、ブランデンブルクが中立となります。オランダ同盟軍は、オランダ本国が既にフランス軍に囲まれている状態から開始するので、その外側に位置しているブランデンブルグが中立になったのは痛かったです(外線から包囲陣に圧力をかけられない)。なお、このゲームのシステムはイベントカードとアクションカードは分離されており、歴史的イベントを出すタイミングをプレイヤーがコントロールすることはできません。オランダ同盟軍は、オランダを包囲するフランス軍を牽制できる位置にいた外線の部隊を失います。
フランスの攻勢は圧倒的で、ナイメーヘン・ナールデンが陥落します。これによりオランダの戦争疲労が「2」になりデ・ウィット兄弟が失脚(史実ではリンチで死亡)しオレンジ公ウィリアムが登場します。唯一、グローリンゲンはフランス軍を撃退しました。
攻城戦で陥落しても、守備隊(このシステムでは守備隊は1戦力/2ステップまでしか置けない)の最後の1ステップは除去されず「名誉の撤退」として最寄りの要塞都市に移動できます。攻撃側は詰将棋的に攻略の順番に気をつければ、守備戦力の総数を減らせると思います。今回はそこまで気がまわりませんでした。
2ターン(1673年)
イベント「Steal a March」により、オランダをケルンが獲得、オーストリアがオランダにたって参戦します。この後ケルンがフランスの補給源でなくなることは、フランスのオランダ戦線の柔軟性を失わせます。
オランダはほんの僅かなことでも助けになります。しかし、フランスにはリュクサンブールが登場。これで、テュレンヌ、コンデ公、リュクサンブールが勢揃いします。
ケルンではリュクサンブールが勝利、そしてプリンス・ウィリアムが守るアムステルダムにはテュレンヌが侵攻。しかし、2回に渡ってフランス軍を退けます。さらに、オランダは運河の堤防を破壊し「洪水」を発動します(とはいえ、序盤は5ユニット以上のスタックで運用されることが本作では少ない〜オランダ同盟軍が弱体のため兵を集める必要が無い〜ので、あまり洪水の効果は期待できません)。アムステルダムは守られました。なお、「洪水」が発動したためフランスの戦争疲労が増し、イギリスが中立になりました(戦争疲労によるイベントは直ちに適用されるのです)。グローリンゲンも攻囲はされますが持ちこたえます。
さらに、モンテクッコリに率いられたオーストリア軍がトリアーでフランスのNoallisに勝利。オランダ同盟軍が一矢報います。しかし、トリアーに来寇したリュクサンブールにモンテクッコリは敗北します。
3ターン(1674年)
イベントは「オランダ海軍勝利」と「疫病」。これでオランダの戦争疲労が「5」になり、ハプスブルク・スペインが参戦します。結果的には、これがゲーム勝敗を決定づけました。スペインは兵力に対して守らなければならない領土が多く、またこの時点での同盟軍主力はオランダ近郊にあります。そして、フランス軍はオランダ戦線にリュクサンブール・テュレンヌ・コンデ公のオールスタートリオを張り付けていても、まだ他戦線に送れる兵力と指揮官がいるのです。
さっそく、リエージュ(スペイン領ネーデルランド)が陥落します。さらに、サン・セバスチャン(スペイン本国)も陥落します。
オランダはこのターンも洪水を発動。ただし、オランダ戦線はフランスも低調(他戦線にリソースを投入したほうが効率がよい)なためか、オランダ自身の危機は去ったように見えます。フライブルクをマックス・エマニュエルが奪回します。
このターンからは、サドンデス条件をなんとか回避するオランダの綱渡りの連続です。このゲームでは、「ターン中はVPは下限0(フランス勝利)/上限35(オランダ勝利)を超えない」 「サドンデスはターン終了時の投影フェイズに判定」するルールなので、フランスがターン中にどれほどVPを獲得しようと、オランダがターン終盤に1点獲得すればサドンデスを免れるのです。
このターンは2VPで終了しました。
4ターン(1675年)
イベントは「デ・ロイテル倒れる」です。地中海はフランスの支配権が変わります。
戦争疲労により、「オレンジ公ウィリアムとメアリー・スチュアートの結婚」が起きます。イギリスがオランダ側で参戦しました。さらにフランスの戦争疲労により「ミュンスター講和」がおき、フランス側だったミュンスター司教はオランダと講和し脱落、1ターンに中立になったブランデンブルクもオランダ同盟軍に立って参戦します。一気にオランダが楽になった…と思われますが、フランスはスペイン本国(マドリード占領!)・イタリア(地中海の制海権が変わったので、ナポリに上陸!)で攻勢、VPを上げます。
オランダは何とかフィリップスバーグを占領し、かろうじて1VPにするのがやっとです。
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スペイン、イタリアに送れる兵力は無い… |
5ターン(1676年)
イベントは「スウェーデンの同盟」と「残虐行為」。
オーストリアに、プリンス・シャルルが登場。オランダ同盟軍には2名しかいない「2」の指揮値を持ちます。早速オランダ戦線に投入され、占領地の奪回(=VP獲得)を目指し、フランス軍と激戦。この年はナイメーヘンでリュクサンブールが勝利します。
一方オランダ同盟はトリアーを奪回。これによりフランスの戦争疲労が増え、暴動が発生、フランスの資源ポイント(軍の創設や補充に使用)が減少します。さらに、サヴォアもオランダ側で参戦します。
VP1。最後の最後でオランダが1VPを得、辛くもサドンデスを免れました。
6ターン(1676年)
イベントは「疫病」。今度はオランダで暴動が起き、資源ポイントが減少します。さらに、手札も4枚の苦しいスタート。
オランダの綱渡りが続きます。フランスはスペイン、ネーデルランドでVPを得られるため、何としても1VPでも上げねばなりません。
メッツをWaldeck(オランダ軍)が攻撃しますが、敗北。
コブレンツをフリードリヒ・ウィリアムが攻撃しますが、これも敗北。
ナールデンは、迎撃してきた宿敵リュクサンブールに野戦でプリンス・シャルルが勝利。しかし要塞を陥落させるには至らず。
「悪天候」カードを使いフランスの手番を減らしますが、フランスがTourailを陥落させ、万事休す。フランスのサドンデス勝利となりました。
●感想
前述の通り、オランダが非常に厳しいゲームだと思います。サドンデスで無ければオランダ勝利、でもよいかもしれません。
私は仏蘭戦争のゲームを待ち望んでいたので、オランダを担当してでもこのゲームをプレイするのは(何度でも)歓迎ではありますが、大多数の方は(このシステムであれば)メジャーなNo Peace without Spain!を始めとした他のゲームをプレイするのではないでしょうか。前述した連続キャンペーンも、おそらくオランダ側プレイヤーの心が折れると思います。
オランダ同盟軍は、総戦力でも、指揮能力でも、補充能力でもフランスに劣ります(そりゃそうです。史実がそうなのですから)。そうであれば、「負けない」ことで粘るうちにフランスに対抗する国が増えていって、時間切れに持ち込むのがオランダの基本戦略だと思います。だから「負けなければ(ゲーム的には)オランダの勝ち」でよいのではないでしょうか。
とはいえ、本ゲームではスペインの参戦によってそうもいきません。今回のプレイでも、オランダ戦線は膠着したのですが、スペイン参戦によって、スペイン本土とネーデルランド、ナポリをフランスが攻めることができるようになりました。これらの地域を守れる同盟軍は圧倒的に不足しているのです。
今回のプレイでは、それでもオランダ側にも幸運があり粘ったのですが、フランスはもっと早くサドンデス勝利が得られたと思います。
オランダの勝ち筋を知りたいですね……
なお、本作では他のNo Peace without Spain!システムのゲームとは異なり、「大勝利」Famous Victoryはまず起きないと思います…同盟軍がそこまでの戦力を集められないので、ブルボンも大兵力を集める必要が無いのです。
●クレーム
システムもほぼ同じ、マップもほぼ同じ、ユニットの大半も流用可能なのだから、拡張キット形式でジップロックで出版してほしかったです。Paper Warsの付録もありかと。その方が単価が下げられるので売上は増え結果としてシリーズ全体では収益があがったのではないでしょうか。基本セットはいちばんメジャーなNPwSでよいと思います。印刷コスト、物理在庫スペースも減りますし。いっそのことPnPでもよかったと思います。もちろんユーザーの保管スペースにもありがたいです。私は(1)(2)(3)持っていますが、ちょっと場所とりますよね…
一方、単品のゲームとしてみるならば、「単品のゲームとしてのルールライティングの洗練さ」を追求してほしかったです。個別タイトルルールの、シリーズルールへの影響が整理されていないので、あっちこっちを参照したり、忘れたりします。
重複感無茶苦茶あります。
例えば、本作について言えば、攻城戦終了時の処理。
攻囲戦終了は、まず17.5.8と17.5.9に要塞内ユニットの扱いが記載され、6.1.1にはVPの加減について記載があります。これらをまとめた手順として17.5.7に記されているのです。ここまではシリーズ共通のルールですが、本作では攻囲戦終了時には18.1.2の戦争疲労も適用されるのです。
本作向けのルールを1冊で作成するのであれば、17.5.7に18.1.2も参照されるように記載すべきであると思うのですが…