Twilight Struggleシステム。1920年~1939年の大戦間期における左翼と右翼の政治的勢力争いを描きます。勝利を目指すには勢力伸長に過激派の助力も必要になってきて、また欧州の軍事緊張も高まる中でのハンドル捌きは難しく、アクションの選択とその結果、その影響がとても教育的。ほんとうに舵取りや平和は難しいと思います。こんな状況ではなおさら難しいですね…
■Europe in Turmoils II(Compass)
基本システムは前述したようにTwilight Struggleシステムです。1ターン2年で全10ターン、1ターンあたり7~8回の手番があります。1回の出番では手札を使い、カードに書かれているイベントまたはOP(オペレーションポイント)を使ってアクションを行います。アクションには支援ポイントの配置(スペースの支配を判定する)・支援チェック(政変;カード1枚で1回)・再軍備です。カードの中には国ごとに得点カードがあり、プレイされるとその国での勢力の多寡によって得点します。
イベントには生起に前後関係を持つ者があり、例えば、「イル・ドゥーチェ」をプレイできるのは「ローマ進軍」が生じた後になります。
このゲームを他のTwightStruggleシステムと比べて特徴づけているのは以下の項目です。
再軍備:英仏独伊…の7か国それぞれにトラックが用意されています。トラックの進め方はトワイライトストラグルのようであると考えてもよいでしょう。トラックを進めるとイベントが発生します。
穏健度:低い方が穏健で無い(=過激)。得点が穏健度を上回るとOPが1減るうえに、0にると緊張度が上昇し、0からさらに下がると制裁を受けます。さらに、ゲーム終了時、穏健度が低い方は、相手との穏健度の差分の制裁を受けます。
緊張度:イベントなどで上昇。一定値に上昇すると第二次世界大戦(WW2)が発生します。WW2が起きるとゲームは終了します。WW2を起こしたプレイヤーは制裁を受けます。
制裁:ゲーム終了時、制裁1ごとに2勝利点を失います。
●展開
できごと(イベントなど)を中心ベースで展開を紹介します。
・1ターン(1920-21年)
フランススコアリング
スターリン
ミュンヘンビアホール一揆成功
ルール占領
・2ターン (1922-23年)
モロトフ
ローマ進軍⇒ローマが右派の勢力圏になりました
ラパロ条約
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黄:ローマ |
・3ターン(1924-25年)
イタリア、ドイツ スコアリング
ウォール街大暴落
・4ターン (1926-27年)
ドイツ再軍備2マス!前進
フライコーア
・5ターン(1928-29年)
ヒトラー
1933年選挙⇒ベルリンが右派の支配となる
得点が穏健度を超え、「OP-1」マーカーが置かれています
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黄:ベルリン、 橙:OP-1マーカー |
・6ターン(1930-31年)
ドイツ、フランス、イギリス スコアリング
国会議事堂炎上(これがボックスカバーアートなのでしょうね(リンクはBGG))
ワシントン海軍軍縮条約
ドイツの再軍備が完了
・7ターン(1932-33年)
スペイン、小協商国 スコアリング
モロトフ-リッベントロップ協定
ベルリンオリンピック
満州事変
ラインラント進駐
モスクワも右派の勢力化に、さらに右派は制裁を受けています。
制裁を受ける→それでもサドンデスなら関係ない!と思ってしまう…こういう考え方が民主的プロセスと平和によくないのかも…ほんとうに教育的なゲームです。
・8ターン(1934-35年)
ミュンヘン協定
ゲルニカ
スペイン・フランス・エーゲ海~黒海沿岸は左派、 ドイツ・ポーランド~ソ連・イタリアは右派、東欧・北欧・イギリス・アフリカは伯仲といったところでしょうか。
・9ターン(1936-37年)
空爆の脅威→右派のサドンデス勝利
ヨーロッパの趨勢は右派が握ることになりました。7~9ターンのイベントの並びを見るにつけ、恐怖が蔓延しているようです。まだWW2も起きていませんが、変わった形の「平和」で幕を閉じた、と言ってもいいのでしょうか.....
●感想
相手との競争を制するのが目的ではありますが、それを成すには自派の過激派の力も使わなければ勝てず、またエクストリームを求める時代(これはイベント等で体感)でもあり、本当に教育的なゲームだと思います。
ゲームそのものも、本当に面白かった!
まさに前段に書いた通りなのですが、穏健度、緊張度をコントロールしながら勢力を増やしていくハンドル捌きが如何に難しいか…